ヒルクライム好きおじさんの日記

ヒルクライム最高!

The PEAKS ラウンド11(奈良吉野)参戦記

2022年9月4日(日)、昨年のラウンド9(鳥取大山)に続いての参戦。

天候は曇り。スタート前のコンディションは悪くない。昨年の大山は一人車中泊の安上がり行程で参加したが、今年は妻も同行して応援に来てもらった。

5:10に下北山スポーツ公園をスタート。

ノースルートからST1、ST2と順調にこなし、最初のスタート地点である下北山スポーツ公園を目指す。体力的にはまだ余裕がある。ASで補給食を受け取り、水分補給も大丈夫だ。それにしてもパンクしている参加者が多い。山間コースで荒れている路面もあり、どうしてもパンクが起きやすくなっている。大会前にタイヤを新しいものに替えておいて良かった。

 

この調子なら制限時間は余裕でクリアできるかなと思っていたのだが、好事魔多し。スタート地点に戻る直前の下り坂カーブで落ち葉によりスリップして派手に転倒!まずは自分の怪我を確認。左肘と左膝下、それから左腿上部に結構酷い擦過傷あり。お気に入りのレーパンも無残な有様。ただ、骨折のような即リタイアとなる怪我はしていないようだ。擦過傷には持参していたバンドエイドを重ね貼りして何とか対処。バイクも幸いディレイラー側を上にして転倒したため、変速トラブルはしていない。フレームに多少傷ができたのはしょうがないと思って諦める。と、ここでハンドル見るとかなり右に曲がっている。直進しようとするとハンドルを不自然に右に傾ける必要があるが、とりあえずがたつきはない。

よし、行けるところまで行くしかないと思ってペダルを踏もうとしたところで、今度はサイコンが無いことに気づいて慌てて周囲を探す。転倒の衝撃でどこかに吹っ飛んだのだろうと思い探したところ、転倒場所が数メートル戻ったところに転がっていた。やれやれと思って拾い上げてみると、液晶画面がものの見事に破損しているではないか。

左右のボタンを押すと音は鳴るが、そもそも画面が破損してしまっているので何の情報も確認できなくなっている。ここから先、サイコンのルート案内を頼りにしていたので、コースマップだけで間違えずにゴールまでたどり着けるか自信がなくなる。ここでゴールまで完走したいと思う気持ちと、転倒により負ったダメージ(曲がったハンドル、バイクについた傷、使えなくなった高価なサイコン(ブライトンのRider750)、破れてしまったレーパン、そして傷ついたわが身)で気持ちがぐちゃぐちゃになる。

そうはいっても次のチェックポイントである下北山スポーツ公園まではあとわずか。完走する気持ちがどんどん萎えていく自分を意識しつつ、とりあえずそこまでは行こうと思い、ペダルを漕ぎ出す。すると本当に冗談のようにチェックポイントはすぐそこだった。

 

落ち葉でスリップした自分のライディングスキルを呪いつつ、通過チップを受け取り、力なく進んでいると前方に妻を発見。元々スタート地点近くに車を駐車していたので、通り過ぎる参加者を眺めつつ、私が走ってくるのを待っていたようだ。ついさっき転倒したことや、怪我のことを伝えると、大きな絆創膏を出し始めるではないか。こんなものを何で持ってきたのか聞いたところ、私のことだから怪我でもするんじゃないかと思い準備していたとのこと。何て気の利く妻だろう!手持ちのバンドエイドでは傷を完全に覆うことができず、出血もあって剥がれそうになっていた。手際よく応急処置をしてくれたところで、「で、これからどうするん?」と聞かれた私は思わず「行けるところまで走ってみるよ」と返事をしてしまう。擦過傷とは別に体全体を打った影響で左足付け根に痛みが出始め、頼りにしていたサイコンが使えなくなったことや、曲がったままのハンドルでここからまだ100キロ近く走りきることへの不安はあったが、やけくそ気味にサウスルートへ向かう。

 

バイクの直接的なダメージは多少の傷を除いては曲がったハンドルだけ。サイコンは使えなくなったが、幸い他の参加者がいるので、なんとなくついていけば(ついていくことができれば)もしかしたら完走できる可能性もあるんじゃないかと自分を励ます。

 

ここで、先ほどのチェックポイントで水の補給をしなかったことを思い出して少し焦る。ボトルにはまだ半分近く残っているが、これで次のエイドステーションまでもつのだろうか?この大会は他の自転車関係のイベントに比べて完走率がとても低い(今回の完走率は全体で60.1%)が、コース攻略の難易度がとても高いのは当然として、参加者一人一人に強い自己責任が求められる。コース上には道を間違えないように案内するガイドもいなければ、完走できなかった参加者を回収するサービスカーもない。自力でスタートして、自力で帰ってくるのが基本だ。そこには自分の体調管理も含まれる。走った道を折り返して戻るのが基本のため、登ってくる自信のない下り坂は進むのをやめる決断も必要とされる。

 

コースも後半部分に入りそれまでの疲労が蓄積され、容赦ない登坂区間にサドルから降りて押してあがっている参加者がちらほら。その気持ちはよく分かる。本当にきつい。自宅近くでよく登坂練習をしてきたが、きついところで10から14%くらいの勾配が普通。しかも距離はそんなにない。ところがどっこい、ここはそんな勾配が延々と続く。まさに坂バカしかエントリーしないようなコースセッティングであり、そもそもこんなつらい思いをすることに一般の人達は価値を見出せないと思う。だからこそのピークスであり、昨年のラウンド9を完走した時も達成感は半端なかった。

 

自分も押して上がりたいところだが、そんなことでは完走できないだろう。怪我した体も痛いし、バイクやサイコンのダメージで負の感情に囚われる自分をだましだまし、なんとかエイドステーション4に到着。この辺りから制限時間との闘いになる。次のチェックポイントがコース上で最後(ST4)となるため、とりあえずはそこまでを目標に再びペダルを漕ぎ出す。

 

この辺りからだっただろうか。もしかしたらその前からだったかもしれないが、雨も降り始めた。ますます路面状態が悪くなる中、これでまたスリップしたりしたら、本当の馬鹿者だぞと自分を戒めつつ前に進む。最後のチェックポイントで通過チップを受け取ったところで、そうだ、おれはGPS機能付きの腕時計(ポラールのバンテージM)をしているじゃないか!と思い出し、ここまでの走行距離を確認。手持ちのロードマップにはコース全長(一般エントリー)が191キロとある。腕時計の積算走行距離をここから引けば、ゴールまでのおおよその残り距離が計算でき、これを制限時間(17:10)までの残り時間で割れば、どのくらいの平均速度で走ればいいか知ることができる。ここでの確認は次のとおり。

 

・積算走行距離:146.43キロ(ということは残りあと44.57キロ)

・走行時間:9時間36分(ということは残りあと2時間24分)

 

計算上では平均でだいたい時速20キロ弱で走れば完走できることになる。まだ登坂区間も残っているので、残りを平均20キロ弱で進めるかはかなり微妙。いよいよ雨足が強くなる中、細心の注意をはらって先に進む。この時にボトルの水がまた少なくなっているのに気づき、散々迷ったあげく、残り時間を気にしながらAS4に寄って水分補給。ボトルを満タンにしてもらい漕ぎ出す。

 

この時、ここまで来る時にも走った長いトンネルのことを思い出し、ライトのバッテリを予備に交換。そういえばAS4に寄った時、ライトのバッテリーが切れたのでもうDNFすると大会スタッフに告げている参加者がいた。このトンネルは本当に長くて暗かった。こんなところでトラブったらいよいよおしまいだなと、かなりビビりながら何とか通過。ここからは走れメロスじゃないが、時間との闘いだった。

 

どうにかこうにか最後の登坂区間を終え、そろそろゴールとなる下北山スポーツ公園が見えるかなと思ってからが本当に長かった。ここでもスリップしないように気をつけつつ、最後の力を振り絞る!このあたりの記憶は定かではないが、残り時間はあと30分くらいだったろうか。そして制限時間となる17:10のぎりぎり2分前にゴール!!

 

今回の完走は何といっても妻の応急処置によるところが大きい。この達成感が感じられるのも、サポートしてくれた妻のおかげと感謝しつつ、フィニッシャータオルを受け取る。こんなつらい思いをしたのに、来年も挑戦したいと思い始めている自分にちょっと驚きながら、次も妻に同行してもらおうと心に決めて会場を後にした。